はじめての先生へ
難聴学級の担当になったばかりで、自立活動で何をすればよいか迷っている先生のためのページです。まずここを読めば、明日の15分を始められます。
このサイトでできること
- 3年分の授業の流れ(年間計画)が、最初から用意されています。
- 各回のページには、先生がそのまま読めるセリフ例、つまずいたときの声かけ、自立活動の区分・項目、個別の指導計画に使える目標の例文がついています。
- 「生徒と見る」画面に切りかえると、大きな文字で、生徒と一緒に進められます。モニターに映しても使えます。
- 各回のワークシート(Word)をダウンロードして印刷できます。学校に合わせて書きかえてもかまいません。
自立活動とは
自立活動は、障害によって生じる学習上・生活上の困難を、生徒が自分で改善したり乗りこえたりする力を育てる指導です。特別支援学校学習指導要領に、6つの区分と27の項目が示されています。生徒一人ひとりに必要な項目を選んで組み合わせ、個別の指導計画にもとづいて行います。
難聴学級では、聞こえのしくみの理解、コミュニケーションの方法、困ったときに配慮を伝える力(セルフアドボカシー)などを扱います。このサイトが受け持つのは、その土台になる「心理的な安定」です。うまく聞こえなかったときに自分を責めすぎず、気持ちを立て直す力を育てます。
くわしくは「自立活動とは」(6区分27項目の一覧と、このサイトの各回との対応)
セルフコンパッションとは
セルフコンパッションは、つらいときや失敗したときに、自分を責める代わりに、大切な友だちに接するように自分に接することです。ひと言でいえば「どんなときも自分の味方でいること」です。アメリカの心理学者クリスティン・ネフが研究を広め、次の3つの要素からなると説明しています。
- 自分へのやさしさ
- 失敗した自分をせめるのではなく、はげまし、いたわる。
- 共通の人間性
- つらいのは自分だけではない、だれにでもあることだと知る。
- マインドフルネス
- 今の気持ちに気づき、大きくしすぎず、小さく見すぎず、そのまま受け止める。
生徒向けの画面では、これらの用語は使いません。「気持ちに気づいて名前をつける」「自分だけじゃないと知る」「自分にやさしい一言をかける」という活動の形で、毎回の15分の中に入れています。
くわしくは「セルフコンパッションとは」(よくある誤解と研究の裏付け)
なぜ難聴の生徒に必要か
- 聞き取れない場面が毎日ある。話についていけなかった、聞き返せなかった、まわりが笑った理由が分からなかった。こうした経験が重なると、「聞こえない自分が悪い」と受け止めやすくなります。このサイトでは、どの回でも「聞こえないのは、自分のせいではない」を土台に置いています。
- 気持ちを表す言葉が少なくなりがち。難聴の生徒は、聞いて覚える機会が少ないぶん、ことばの発達に配慮が必要なことが多くあります。気持ちを表す細かい言葉も、自然には身につきにくいことがあります。そこで毎回のはじめに、気持ちを言葉と数字(0〜100)で表す練習をします。気持ちを言葉にする力は、必要な配慮を言葉で伝える力にもつながります。
- 配慮のお願いは、一度では終わらない。先生が替わるたび、学年が上がるたび、生徒は配慮をお願いし直すことになります。うまくいかない日があっても気持ちが折れずにまたお願いできる心(レジリエンス)を、セルフコンパッションで育てます。
15分の進め方
どの回も、同じ4つのステップで進めます。毎回同じ流れなので、生徒も先生も見通しを持てます。
| 時間 | ステップ | すること |
|---|---|---|
| 約3分 | 今の気持ち | 気持ちの言葉を選び、それぞれの強さを0〜100の数字で表す。1年目のはじめは1〜2個から。 |
| 約4分 | 今日の場面 | 架空の難聴の中学生「ソラ」の場面を読む。自分のことを話したくない生徒も、ソラの話として考えられます。 |
| 約6分 | 考える | 今日の問い(1〜2問)に答える。 |
| 約2分 | 自分にかける一言 | 今日の言葉を選ぶか、自分で作る。 |
準備
- その回のページを開き、「先生用ガイド」を読んでおく(5分ほど)。
- ワークシート(Word)を印刷しておく。
- 授業では「生徒と見る」に切りかえ、タブレットを2人で見るか、モニターに映す。
画面の入力は、その場で話し合うためのものです。保存されないので、残したいことはワークシートに書きます。
ワークシートの保管と引き継ぎ
- ワークシートは、生徒1人に1冊のファイルにとじ、学級で保管します。気持ちにかかわる記録なので、ほかの人の目にふれない場所に置きます。
- あとの回で、前のワークシートを使います(第12回:これまでの一言を見返す、第14回:1年分を見返す、第15回:ほっとすることリストや言葉を見返す)。
- 1年目第15回で書く「来年の自分への手紙」は2年目の第1回で、2年目の第15回で書く「コーチからの手紙」は3年目の第1回で読み返すので、年度をこえて保管します。
- 担当の先生が替わるときは、学級の中でファイルごと引き継ぎます。
- 卒業のとき、3年目第15回の手紙は本人にわたします。ファイルは本人に返すのを基本とし、本人が望まない場合は、学校の個人情報の規程に従って保管・廃棄します。
- この気持ちの記録は、本人の同意なしに高校へ引き継ぎません。高校へ引き継ぐのは、個別の教育支援計画などです。
年度の途中から始めるとき
11月から始める場合、年度末までに6〜8回ほど行えます。1年目の第1回から順に進め、終わらなかった回は次の年度の5月から続けてください。自己チェック(自分とのつきあい方チェック)は、始める日に1回目、年度末に2回目を行うと、変化が見えます。
つらい記憶が出てきたとき
自分にやさしくすることを考えると、前にあったつらい出来事を思い出して、かえって気持ちが重くなることがあります。からかわれた、聞き返していやな顔をされた、といった経験です。これは失敗ではありません。心が少しずつ開いてきたしるしと考えられています。慌てずに、次のように対応してください。
- その日の活動は、途中でやめてかまいません。
- 「思い出したんだね」と受け止めます。出来事をくわしく聞き出す必要はありません。
- 足の裏を床につけて感じる、手を温める、ゆっくり数を数えるなど、体の感覚に目を向けます。
- 最後にもう一度気持ちに数字をつけ、少し下がってから終えます。
- 強いつらさが続くとき、いじめなどの事実が分かったときは、1人でかかえずに、学級担任・養護教諭・スクールカウンセラーにつなぎます。
- 「消えたい」「いなくなりたい」など命にかかわる言葉や、自分を傷つける様子があったときは、その日のうちに管理職・養護教諭・スクールカウンセラーと共有し、学校の手順に従います。
このサイトで使わないもの
- 目を閉じて心を静める練習や、決まった言葉を唱える活動。セルフコンパッションの本には多く出てきますが、公立学校では宗教的に受け取られるおそれがあるため、気持ちの数値化と言語化に置きかえています。
- 音に耳をすます活動。聞こえに頼る活動は、目で見る・手でふれる・数字で表す活動に置きかえています。
- 生徒の記録の保存。このサイトは何も保存・送信しません。記録は紙のワークシートに残します。