自分の味方ノート

セルフコンパッションとは

先生向けの解説です。授業の前に、このサイトがどんな考え方にもとづいているかを知っておくと、生徒の反応に落ちついて対応できます。

ひと言でいうと

セルフコンパッションは、つらいときや失敗したときに、自分を責める代わりに、大切な友だちに接するように自分に接することです。このサイトでは、中学生に伝わりやすいように「どんなときも自分の味方でいること」と言いかえています。

アメリカの心理学者クリスティン・ネフが、2003年に考え方を整理し、研究を広めました。

3つの要素と、このサイトでの扱い

自分へのやさしさ
失敗した自分を責めるのではなく、はげまし、いたわる。
→ 毎回の「自分にかける一言」
共通の人間性
つらいのは自分だけではない、だれにでもあることだと知る。
→ グループ学習の回、ソラの場面
マインドフルネス
今の気持ちに気づき、大きくしすぎず、小さく見すぎず、そのまま受け止める。
→ 毎回の「今の気持ち」(名前と数字をつける)

生徒向けの画面では、これらの用語は使いません。用語を覚えることより、活動として毎回くり返すことを大切にしています。

よくある誤解

「自分を甘やかすことでは?」

セルフコンパッションは、失敗をなかったことにしたり、努力をやめたりすることではありません。自分を責めすぎて動けなくなるのを防ぎ、次にもう一度やってみる力を取りもどすためのものです。

「わがままにならない?」

自分にやさしくすることは、ほかの人を軽く見ることではありません。自分を大切にすることと、ほかの人を大切にすることは両立します。配慮のお願いも、わがままではなく、みんなと同じように学ぶための調整です。

「自己肯定感と同じ?」

自己肯定感(自分はできる、という感覚)は、うまくいっているときに高まり、失敗すると下がりやすいものです。セルフコンパッションは、うまくいかなかったときにこそ働く、自分との付き合い方です。

なぜ難聴の生徒に必要か

研究の裏付け

中高生のセルフコンパッションと心の健康

ネフらは、10代(平均15歳)と若い大人を対象に調べ、セルフコンパッションが高い人ほど心の健康(ウェルビーイング)が高いという強い関連が、10代にも見られることを報告しました。自分を否定的に見がちな10代への支援の手がかりになると述べています。(Neff & McGehee, 2010)

気持ちに名前をつける(感情ラベリング)

大人を対象に、表情の写真を見せる実験を行ったところ、写真の表情に「怒り」などの言葉で名前をつけると、名前をつけない場合にくらべて、脳の扁桃体(不安や恐れにかかわる部分)の反応が弱まることが示されています。自分の気持ちに名前をつける活動は、この考え方を参考にしています。(Lieberman ほか, 2007)

気持ちを細かく言い分ける(感情の粒度)

つらい気持ちを細かく言い分けられる人ほど、強い気持ちになったときに、気持ちを立て直す工夫を多く使っていることが報告されています。「気持ちの言葉ずかん」で言葉を増やす活動は、この考え方にもとづいています。(Barrett ほか, 2001)

気持ちの強さを数字で表す

つらさの強さを0〜100の数字で表す方法は、行動療法・認知行動療法で「自覚的障害単位(主観的障害単位、SUDS)」として古くから使われています。このサイトでは、つらい気持ちだけでなく、いろいろな気持ちの強さを数字で表します。数字は成績ではなく、自分の状態に気づくための目印です。(Wolpe, 1969)

授業で気をつけること

参考文献

  1. Neff, K. D. (2003). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity, 2(2), 85–101.
  2. Neff, K. D., & McGehee, P. (2010). Self-compassion and psychological resilience among adolescents and young adults. Self and Identity, 9(3), 225–240.
  3. Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428.
  4. Barrett, L. F., Gross, J., Christensen, T. C., & Benvenuto, M. (2001). Knowing what you're feeling and knowing what to do about it: Mapping the relation between emotion differentiation and emotion regulation. Cognition and Emotion, 15(6), 713–724.
  5. Wolpe, J. (1969). The practice of behavior therapy. Pergamon Press.
  6. クリスティン・ネフ、クリストファー・ガーマー『マインドフル・セルフ・コンパッション ワークブック』(日本語版)。考え方の参考にしました。このサイトの文章・場面・問いは独自に作ったものです。